パインファニチャー
Text Size :  A A A
|  杣野工房について  |
|  家具Gallery  |
|  News  |
|  Diary  |
|  Bbs  |
|  Contact  |
|  Link  |
|
Img20080315112330
Img1b20080315112330
Img1c20080315112330
生涯、この地で暮らそうと決めていた私達でしたが、風太の寂しそうな様子を見ていると、子供の多い所に引っ越したほうがよいのではと、考えるようになっていました。風太の入園を機に約十年間を過ごした面河村から、三人と猫一匹で、松山へ帰ることにしたのです。幸いにも父母や兄も賛成してくれたので、子供の頃からの夢だった桃畑に、住居と工房とショールームを一棟で建築する事にしました。夫の友人で腕のいい大工の篠崎さんが、棟上げまでの作業を請け負ってくれることになりました。家の外装ができたところで入居をし、住みながらの家作りの始まりです。面河に移って、台所や浴室を一つ一つ作って生活し始めたように、十年後、松山で同じように新しい生活をスタートさせたのです。建坪が一○七坪という広さですから、夫一人で内装工事をするのは並大抵ではありません。建て始めて三年経った今でも、まだ完成していませんが、夫の手作りの家に住むという最高の贅沢をさせてもらっているので、少しも苦になりません。風太も友達を連れて来ては、「僕の家は、お父さんが建てたんだよ」といって自慢しています。新しいショールームに十七世紀のイギリスのクレードル(ゆりかご)があります。これをいつも見て、長く使える道具はどうあるべきか考えなさいと、京都の中川氏が貸して下さったものです。どこの何という人が作ったものか分からないけれど、三○○年経った今も、道具としての機能を果たしています。それを見ていると、夫の家具作りは正しいと思えてくるのです。使い捨ての家具には反対です。木は生きてきた年月分、使用に耐えられると言われています。三○○年の木なら、三○○年使える家具を作りたい。親から子へ、子から孫へ伝えてゆく家具作りを目指し、夫の仕事のパートナーとして、これからも手伝ってゆきたいと思っています。面河を出て三年経った今でも、目を閉じると様々な出来事が甦ります。チェンバロやバージナルのサロンコンサートでは、木造校舎に美しい音色が響き渡りました。ユリねえさんやマーねえさんに教えてもらった初めての野菜作りでは、育てることの喜びを教わりました。面河で過ごした約十年間は家族全員の宝物です。こうした宝物の入った思い出の小箱を時々開けて、楽しみたいと思います。今年もまた春になれば、持ち帰った山桜が優しい花を咲かせ、山の人たちの笑顔や、面河の風を運んでくれるでしょう。面河はいつの間にか、私の心のふるさとになっていました。面河の事を記録に残しておきたいと思っていた矢先に、よい機会をいただき、面河の十年間を整理することができました。一年間ありがとうございました。  平成十年三月